アウトカムデザインのプロセスと効果


謹賀新年 あけましておめでとうございます。
本年もイノベーション・キッチンをどうぞよろしくお願い申し上げます。

お正月を迎え、初詣に行かれた方も多いかと思います。
手を合わせて、どんなことをお願いされたでしょうか。
子どもの頃は、自分の欲しいものやお願い事など「あれもこれも」お願いしていましたが、年を重ねるにつれて「最も本質的で大切なことは何か」と考えるようになり、日頃の感謝をお伝えして家族の健康と幸福を願うようになりました。

■本質的な願い

私たちがイノベーションのコンサルティングを行う際のアプローチの方法として、「アウトカムデザイン」があります。
”アウトプット”という言葉はよく使いますが、”アウトカム”は聞きなじみがない方もいらっしゃるかもしれません。
”アウトカム”とは、行政や医療の現場で使われるようになった言葉で、施策により発生する本質的な効果・成果を意味します。
例えば、行政の施策として図書館の造成というテーマの場合、施設の規模、蔵書数、開館時間、職員数などといった目標が”アウトプット”。「周辺住民の知的水準を上げ、文化的な生活をもたらす」という本質的な目的が”アウトカム”です。
また医療サービスであれば、<病床数><投薬実績><手術実績><医師><看護師数>等が”アウトプット”で、「患者のクオリティ オブ ライフを高める」というのが”アウトカム”になります。

三省堂大辞林によると

行政活動の成果、受益者の観点からとらえた具体的な効果や効用

とありますように、提供者側の成果ではなく、受益者(ユーザ側)にもたらされた成果であるという点が、アウトカムのユニークな点です。

アウトカムの話をすると、未来をイメージするという点で”ビジョン”とどう違うのかと問われることがあります。”ビジョン”は「2020年までに売り上げ何億円!」のように企業側の到達したい姿を掲げる場合も多いですが、「ユーザ側、生活者側にもたらされた成果」にフォーカスして提言するのが、アウトカムの特徴です。

例えば、「新規事業を考える」という課題が与えられたとき、よくあるのは、「何はともあれブレストやアイデアソンで、斬新なアイデアを考えよう!」というケース。しかし、いきなり考え始めても、そうそう良いアイデアはうまれてきません。

私たちがイノベーションのコンサルティングで使う「アウトカムデザイン」とは、製品やサービスのアイデア(いわばアウトプット)を検討する前に、企業が、社会や生活者にどんな本質的な価値を提供したいのか、実現したい社会像・未来像は何なのかを、生活者主体で描くことを指します。

■アウトカムデザインのプロセス

アウトカムをデザインするための枠組みとして、私たちは以下の4つのリフレーミングのプロセスをご提案しています。

1.やりがい
1つ目のプロセスは「やりがい」です。
自分の課題を掘り下げるととともに、他者の意見が出てくる背景(経験や環境)を理解します。自分と他者の違いを超え、チームとしての思いを共有し、チームのやりがいを見出します。

2.チャンス
2つ目のプロセスは「チャンス」です。
現代にどんな社会課題や生活不安があるのか、社会環境を見つめなおすことで社会の流れや変化を実感し、解決したいマーケットニーズを発見しチャンス(市場)を発見していくプロセスです。

3.危機感
3つ目のプロセスは「危機感」です。
2で見つけた課題やチャンスに対して、他のプレイヤーがどのようなアプローチをとっているか情報収集するプロセスであり、他のプレイヤーは既存の競合にとどまらず、拡大された領域や異業種が取り組む新しいアプローチを知ることで、良い意味での「危機に対する感度」を高める効果があります。

4.役割と責任
4つ目のプロセスは「役割と責任」です。
所属する企業や組織の役割・使命を再認識するプロセスです。経営理念や社史を紐解きながら、自分たちの役割、アイデンティティを再認識し、その上で現代の自分たちの役割を捉えなおします。

アウトカムデザインは、上記の4つのリフレーミングプロセスを実施しながら、視野を広げ、日頃の業務活動等で固定化された価値観やマインドセットを開放し、その企業やチームの構成者達が本来持ち合わせている気質と、現代社会が抱える課題との接点を探っていくアプローチです。

■アウトカムデザインの効果

アウトカムデザインには、以下の5つのうれしい効果があります。

1.チームの力UP
自分の関心と会社の役割を関連づけてアウトカムをデザインするので、個人のやりがいに繋がりやすく動機付けしやすい。またチームによる相互理解も進み、個人の持ち味を効果的に引き出しあうことが可能になります。そうなるとコミュニケーションギャップによる非建設的なやり取りが減少して、目的を合わせて事業に邁進できるようになります。

2.引き寄せ力UP
最終的な目的を明確にすることで、”選択的注意バイアス”を起動させ、今まで見えていなかった情報がどんどん見つかるようになったり、アウトカムを自ら発信することで、実現に協力的な賛同者を引き合わせてくれるようになります。

3.上司等の短絡的な否定を防ぐ
上申した結果、上司の好き嫌いでアイデアが採用されたリ、却下されるといったことはありませんか?
アウトカムがあれば、その親和性をアイデアの判断基準に据えることができる為、上司の好みによるダメ出しなど、短絡的なアイデア批判に翻弄されずに済みます。

4.アイデアへの固着を防ぐ
自分の生み出したアイデアはかわいいものです。でも時として無駄に執着して冷静な判断ができなくなることも。
アウトカムがあれば、アウトカム実現が最大の目的となるため、個々のアイデアに対する執着が減り、よりよいアイデア、実現可能性の高い他者の手段を採用することを厭わなくなります。

5.現状維持バイアスに打ち勝つ
イノベーションは不確定な未来に対する取り組みなので、時として現状維持バイアスによって立ち消えそうになります。しかし時代・市場・競合などの情報による変革の必然性を共有したり、企業理念から一貫した大義を示すことによって、やらざるを得ない状況、断れない状況を創り出すことができます。

■アウトカム思考のススメ

これまでの成長社会で行ってきたカイゼン活動は、比較的単純で、ある程度予測することが可能でしたが、成熟社会において、イノベーションを、しかも大きな組織の中で執り行う場合は、不確実性が極めて高い未知なる取り組みであり、これまでと同じやり方では実現が難しいものです。
アウトカム設定は、やっていない組織にとっては正直めんどくさいように感じますが、個人とチームの思いを共有し、合意できる大目的を拠り所ろとして、組織に対してその思いややるべき必然性を説くための説得力を身に付けることは、実は新しい活動を進めるためには効率的なプロセスであると言えます。

2018年、アウトカム思考の新習慣を始めてみませんか。