押さえておきたい!イノベーションの分類 ~最近話題の破壊的イノベーションとは?~


イノベーションについて理解を深めていく中で、これは押さえておくべき!というのが、イノベーションの分類です。
最近話題になっている、「破壊的イノベーション」も、この分類の一つとして出てきます。
イノベーションの分類がわかれば、さまざまな事例がどのような点で優れているのかも理解しくやすくなると思います。

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【参考文献】
◆イノベーションのジレンマ
(クレイトン・クリステンセン 著)
◆日本のイノベーションのジレンマ
(玉田俊平太著)
◆イノベーションのDNA
(クレイトン・クリステンセン/ジェフリー・ダイアー/ハル・グレガーセン 著)
◆クリステンセン教授に学ぶ「イノベーション」の授業
(玉田俊平太 監修 イノウ 編著)

これらの文献を参考に、「変化する対象」「変化する方向」という視点によるイノベーションの分類について、整理してみました。

以前の記事で紹介したイノベーションの定義とあわせて、これから紹介する分類もぜひしっかり覚えてくださいね。

1.「変化する対象」による分類

まず最初は、「イノベーションにより変化する対象」という視点からの分類です。
どの部分を変化させるのか、という切り口で考えると、「プロセス・イノベーション」「サービス・プロダクト・イノベーション」「メンタルモデル・イノベーション」の3つに分けられます。

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▼プロセス・イノベーション

提供者が、製品を作る方法やサービスの提供の仕方を変化させるイノベーションです。
生活者が受け取る製品やサービスはに変化しなくとも、それを提供するプロセスが変わることも、イノベーションにあたります。
たとえば、トヨタのかんばん方式、インターネットバンキング、SPA方式、などがあります。
プロセスが変化することで、製品・サービスの価格が下がったり、利便性や安全性が上がったり、という効果があります。

 

▼サービス・プロダクト・イノベーション

生活者に提供されるサービスや製品そのものを変化させるイノベーションです。
たとえば、トランジスタラジオ、ウォークマン、スマートフォン、ハイブリッドカー、LED電球、そのほかにもいろいろあります。
一般的に、「イノベーション」というと、これを思い浮かべる人が多いのではないかと思います。
これらの製品やサービスを利用することによって、生活者の暮らしが直接変化するので、目につきやすいのでしょう。

 

▼メンタルモデル・イノベーション

製品やサービス自体は変化はなくとも、プロモーションによって人々の認識を変化させるイノベーションです。
たとえば、スポーツ後に飲むというイメージだったポカリスウェットを、コマーシャルによって二日酔いにも飲むとよい、というイメージを付加させたケースや、デビアスの「スイートテン・ダイヤモンド」というキャッチフレーズにより、結婚10年目にもダイヤモンドを贈る風習を根付かせたことも、これにあたります。

 

2.「変化する方向」による分類

分類の2つめは、「イノベーションにより変化する方向」という視点からの分類です。
「持続的イノベーション」「破壊的イノベーション」があり、さらに前者は「漸進的(ぜんしんてき)イノベーション」「革新的イノベーション」、後者は「ローエンド型」「新市場型」に分けられます。

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▼持続的イノベーション

持続的イノベーションとは、今ある製品やサービスを、今までと同じ方向に向かってよりよくしていくイノベーションです。
技術の進歩が、いままでその製品を使っていた生活者が望む方向に向かって進んでいきます。
携帯電話やスマートフォン、家電など、どんなものでも新しい製品が出れば、前の機種より性能が上がることが一般的ですね。

持続的イノベーションは、変化の度合いの違いで「漸進的(ぜんしんてき)イノベーション」「革新的イノベーション」に分けられます。

 

▼漸進的(ぜんしんてき)イノベーション

漸進的イノベーションは、時間の経過とともに徐々に性能を向上させたイノベーションです。
具体的には、自動車用ガソリンエンジンの馬力や燃費、冷蔵庫やエアコンの省エネ化、などがあげられます。
生産者が、技術を少しずつ改善し、それによって性能も少しずつ進歩してきたような例です。
時間とともに変化する性能は、このようなS字曲線で表されます。(オレンジの点線は、顧客の求める性能です。)

※S字曲線とは、ある製品の性能や技術が成長していく様子のモデルです。成長の様子が、開発の初期段階ではゆっくりなのが次第に急激になり、その後成熟段階ではまた緩やかに、と変化していきます。

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あまり大きなインパクトはないですが、地道な改善活動によるもので、日本人っぽい感じがします。たくさんの技術者や生産者の努力によって、少しずつ、確実に性能が進歩してきて、それによって便利になったものがたくさんあります。

▼革新的イノベーション

革新的イノベーションは、一気に性能を向上させてライバルを突き放すイノベーションです。

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もともとあった技術(灰色のS字曲線)に対し、新しい技術などによって大きく性能を飛躍させたケース(青色のS字曲線)です。(オレンジの点線は、顧客の求める性能です。)
具体的には、「ハイブリッド車」「LED電球」などがあげられます。
新しい技術により、飛躍的に性能や機能が向上するので、いわゆるイノベーションという言葉からイメージすると、この革新的イノベーションが最も近いでしょう。
「技術革新」という日本語訳も、まさにこのイメージですね。

 

 

ところが、生活者が望むレベルを大幅に超えて性能を向上させても、あまりメリットがなくなってきます。
たとえば高画質を追及した4Kテレビは、そこまで画質をあげられても、旧製品との違いが分からないですよね。それで価格が上がってしまっては、なかなか新しい製品を買いたいと思わないでしょう。
そんな状況では「破壊的イノベーション」が起こりやすくなります。

 

▼破壊的イノベーション

破壊的イノベーションとは、主要機能の性能では既存の製品・サービスより劣るものの、価格の低さや新たな価値の提供を重視したものを提供するイノベーションです。
たとえば、今すでにある製品・サービスと比較して性能が低く、取るに足らない、大して価値のない存在として誰も相手にしないような製品・サービスがリリースされたとします。
初めは、機能を限定した代わりに価格が安いものや、一部の価値(機能、技術、性能など)に特化したもので十分と考える顧客、またちょっと変わったものが好きな顧客から受け入れられます。
その製品・サービスが、徐々に改良を重ねることで、これまでの高性能なスタンダードのものを好んでいたユーザにまで受け入れられるようなものとなる、場合によってはスタンダードに成り代わる、というようなプロセス全体を「破壊的イノベーション」と呼びます。
破壊的イノベーションには、性能の代わりに何を提供するかの違いで「ローエンド型」と「新市場型」の2通りあります。

 

▼ローエンド型破壊

既存の製品・サービスよりも主要な性能は劣るものの、安価なものを提供するイノベーションを、ローエンド型破壊と呼びます。
下の図でみると、ローエンド型破壊(青色のS字曲線)は、ある時点(t)では既存製品(灰色のS字曲線)よりも性能が下がっているのがわかります。(オレンジの点線は、顧客の求める性能です。)
しかし、すべての人がターゲットにはなりえなくとも、限定的なシーンでしか使わないから、難しい機能は使わないから、などの理由で低機能なものを好む人は一定数いるのです。
さらに、その性能が低い製品も、時間とともに徐々に改良されて性能を向上させ、いずれは広く受け入れられるようになってきます。

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たとえば回転寿司は、カウンターのある職人の握る寿司屋と比べると、格式が下がったり、ネタの品質や味わいなど、敵わない点はあるでしょう。それでも、子供がいても気軽に入れて、十分においしいお寿司をリーズナブルなわかりやすい値段設定で安心して食べられる、と考えると、カウンターのお寿司屋さんとは別の価値があります。
出始めのころは廉価版の寿司屋、という少しネガティブなイメージもあったかもしれませんが、本格的な寿司屋にはない斬新で面白いメニューを展開したり、機械の改良により職人が握ったのと変わらないレベルのにぎりを提供できるようになったり、注文システムに工夫したりして、今では「回転寿司」というジャンルを築くまでになりました。
私たち生活者にとっては、「高級なカウンター寿司」「リーズナブルな回転寿司」と選択肢が増えたことになります。

▼新市場型破壊

既存の製品・サービスよりも主要な性能は劣るものの、利便性など新たな価値を提供するイノベーションです。
下の図では、既存製品(灰色のS字曲線)とは別の空間に青色のS字曲線が描かれています。(オレンジの点線は、顧客の求める性能です。)
新たに付加された価値は、初めは一部の人にしか受け入れられないこともしばしばですが、その価値が生活者にマッチするものであれば、いずれは多くの人に広まっていきます。

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たとえば一般的な掃除機は、吸引力やゴミの捨て方などの性能を向上させてきました。ところがルンバは、「勝手に掃除してくれる」という新たな価値を加えた掃除機です。
私もルンバを愛用していますが、けっこう音もうるさいし、床に物やケーブルがあるとひっかかってしまうこともしばしばです。それでも、平日の朝、ちょっとだけ時間をとってルンバをセットすることで、部屋をきれいに保てます。仕事をしていて子供もいると、これほどありがたいものはありません。掃除機もルンバも、どちらも手放せません。
スマートフォンも、発売当初は、ガラケーと比較すると、ワンセグやおさいふケータイ、赤外線などの機能がないものの、iPod、インターネット、電子メール、多彩なアプリなど、それ以外の価値があり、 初めこそ一部のマニアックな人の使うガジェットのようなイメージだったものが、いつの間にかスタンダードなものとして置き換わってしまいました。

 

おわりに

このように、2つの切り口によるイノベーションの分類についてお話してきました。
破壊的イノベーションを見てみると、「技術革新」というような大げさなものばかりでなく、生活者が身近にほしい、利用したいと思うものこそイノベーションと呼ぶべきものだとわかってもらえると思います。
しかし、昔と違ってモノが溢れている今、生活者の望むものは単純ではありません。ただただ高機能高性能のものをつくればよいのではなく、何が求められているのかを考えなくてはなりません。
イノベーションは競争ではなく、生活者に寄り添う開発だと私たちは思っています。
どのようにすれば、みんなに望まれるイノベーションが起こせるのかについて、これから考えていきたいと思います。