「情けは人の為ならず」解釈の変遷


皆さんこんにちわ。高橋です。暑いですねー。

システム思考などを勉強してると、日本のことわざとか先人の教えっていうものは、システム思考的だな、と思って改めて関心が沸くのですが。

そこで本日は一つことわざの解釈の変遷について共有したくご紹介します。

■情けは人の為ならず

このことわざは皆さんご存知ですよね。
三省堂「大辞林」によれば

情けを人にかけておけば、巡り巡って自分によい報いが来るということ。

で(辞書にも注意書きがされていますが)近年は誤った訳として

情けを人にかけると、本人の自立のために良くない

と解釈される方が増えてるとか。ある調査によると約半数(45.7%)の人が誤訳で認識していたそうです。(※文化庁「国語に関する世論調査」H22年

ちなみに、誤訳してしまう理由として挙げられてるのが以下の2点

①打ち消し表現「ず」が、「人の為」ではなく「為」にかかると間違って解釈されたから

つまり、
・情けは「人の為」ならず=人の為ではない
だったものが
・情けは人の「為」ならず=人の為にならない
と誤解されてしまった。

②80年代ごろから互恵主義より個人主義が蔓延し、自分のことは自分で、という価値観が台頭したから。

・互恵主義:助け合い精神、束縛、しがらみ
・個人主義:独立独歩、自由、われ関せず

実は私、辞書的な正しい解釈を知りながら、なんともモヤモヤしておりました。
”めぐりめぐって自分に返ってくるから”なんて、ちょっと打算的…というかギブアンドテイクの理論で説明するだけでは足りないような、違和感を感じていたんです。

例えば、川で子供が溺れているのを目撃した青年が、自らの命を顧みず助けたりしますよね。のちにニュースなどで「何も考えていなかった、気が付いたら川に飛び込んで助けていた」などと当事者談が記載されていたりします。
それを見て美談のために作った話とも思えないし、「巡り巡って自分に・・・」などと考えてやっていた行動とはどうしても思えない…

もっと本能的に、人は人に情けをかけるんではないか、というのが私の感覚でした。

そして、そういった感覚は、昨今の脳神経科学の研究でいろいろ明らかになってきました。

■脳科学による「思いやり」の研究

社会的な脳の仕組みを研究している、(クレアモント大学院大学)神経経済学研究センター所長のポール・J・ザック教授によって、脳内神経物質であるオキシトシンの働きが解明されつつあります。

人間は感情を持った社会的動物であり、約300種いる哺乳類のうち、赤の他人にエサを分け与える唯一の種だそうです。

困っている人に手を差し伸べることを「快感」と感じるように、脳がプログラムされていて、思いやりのある行動をとると、脳内にオキシトシンという快楽物質が分泌されます。

人は感情を持った社会的動物であり、困っている人に手を差し伸べることを「快感」と感じるようにプログラムされている。「トラストファクター」より

利他的行動、思いやりを持つことは本能的に幸せな事であり、脳の活性化にも一役買っていることだと解明されつつあるようです。

■第三の解釈

そんな折にとても共感できる解釈に出会うことができました。

そもそも人に情けをかけたいと思うときというのは、人にやさしくすることにより「自分の心が満たされる」からではないでしょうか。(中略)「人に情けをかける」という相手の為を思って行動した結果、自分自身の心が喜びで満たされるということです。人間の心とは本来そのように出来ています。(カッパ三太郎さんのブログ「空飛ぶ畳」より)

”めぐりめぐって返ってくる”を、外的なことだけではなく、自分の内的なこと(心が満たされる・喜びで満たされる)と表現されいて、しかもそれは本能的なことだと記されている点が大変共感できます。

「情けは人の為ならず」改めて私が訳すならこんな感じでしょうか。

”人に情けをかけると、自分がそんな自分を好きになる。そのことが、自分自身の幸福度を高め、自己肯定感を高め、ひいては自身の能力を引き出すのだ!”

人を思いやる行動は、自己肯定感を高める行動であり、自分に自信を与える事で、自分の能力の発揮につながるものだ、と考えています。

■まとめ イノベーションと思いやり

イノベーションにおいては、SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」など社会的な課題にフォーカスしてニーズを発見していく取り組みが注目されています。
代表的な社会課題をトリガーに社会的なイノベーションを起こすことが急務なのは間違いありませんし、さらにもっとローカルで身近な問題からニーズやチャンスを発見していくこともイノベーションに繋がると考えます。

「チャンスを発見する」という側面だけではなく、自分自身が持つ「感情(衝動や思いやりなどの本能」に従える幸せ、自分自身にとって自然な欲求に応えようとして発揮される「潜在的な能力」という意味でも、「思いやり」って重視したいポイントかなと思っています。

イノベーションによる生産性の向上と、それに従事する人の幸福度、どちらも高まるような世の中を目指したいですね。